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校門まで残り200メートル。
一度立ち尽くす。
朋也「はぁ」
ため息と共に空を仰ぐ。
その先に校門はあった。
誰が好んで、あんな場所に校門を造ったのか。
長い坂道が、悪夢のように延びていた。
声「はぁ」
別のため息。俺のよりかは小さく、短かった。
隣を見てみる。
そこに同じように立ち尽くす女生徒がいた。
校章の色から同じ三年生だとわかる。
けど、見慣れない顔だった。短い髪が、肩のすぐ上で風にそよいでいる。
女の子「………」
今にも泣きだしそうな顔だった。
俺なんかは常習犯だったからなんとも思わないが、真面目な奴なのだろう…
この時間にひとり教室に入っていくことに抵抗があるのだ。
女の子「うんうん…」
何かを自分に言い聞かせるように、目を暝って、こくこくと頷いている。
女の子「………」
そして少女は目を開く。
じっと、高みにある校門を見つめた。
女の子「この学校は、好きですか」
朋也「え…?」
いや俺に聞いているのではなかった。
妄想の中の誰かに問いかけているのだ。
その彼(あるいは彼女)は、どう答えたのだろうか。
女の子「わたしはとってもとっても好きです
でも、なにもかも…変わらずにはいられないのです 楽しいこととか、うれしいこととか、ぜんぶ…ぜんぶ変わらずにはいられないです」
たどたどしく話し続ける。
女の子「それでも、この場所が好きでいられますか」
………。
女の子「わたしは…」
朋也「見つければいいだろ」
女の子「えっ…?」
少女が驚いて、俺の顔を見る。
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