鞍馬の少年

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1161年、朝廷に従う武士の一団は源氏と平家の二派に別れ衝突した。 都に殿上し、勢力を伸ばした平清盛率いる平氏。 都を離れ、板東を拠点とした源義朝率いる源氏。 その戦いは熾烈を極め、敗れた義朝は幾人かの息子を遺しこの世を去った。 長兄、次兄共に敗死した為、嫡流となった三男頼朝は伊豆に配流され、源の血を引くものは地方へ身を潜める。 一方で勝利を手にした清盛は、公卿を越え皇族との繋がりをも結び付け、『平家』一門が朝廷の権力を欲しいままにした。 やがて世は後白河法皇による院政が執り行われ、その為に擁立した若き天皇の外戚として清盛は朝廷での地位を盤石なものにして行く。 事実上、地方自治権を得て独自の文化を築く北方の雄、藤原氏の治める奥州を除く全国が平家の赤旗と揚羽蝶の紋に従った。 平安時代末期―― 世は摂関政治から院政へと移行し、公家の護衛に過ぎなかった武士がその力を認められ、殿上に名を連ねる様になっていた頃である。 この物語は、時代に飲み込まれ衰退の一途を辿った源氏の棟梁、源義朝が娶った新しい妻である常盤が、三人の子を連れて落ち延びた事から始まる。 その末子牛若丸、後に遮那王、二歳の冬であった。
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