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義経が平泉で過ごす様になり、六年。
現世は遂に戦乱の口火を切った。
治承四年四月。
皇位第二継承権を持つ以仁王が、平家に対し追討の院宣を全国に発したのである。
その背後には、平家一門と後白河法皇との熾烈な権力抗争の爪痕が深く刻まれていた。
若き高倉天皇を擁し、院政として実権を握りたい後白河法皇。
平家一門の血を引くまだ幼い安徳天皇を擁し、皇家すら傀儡とせん清盛。
その二つがぶつかり合い、清盛が武力での威圧によい勝利を収めた結果――
安徳天皇の即位によって高倉院が誕生し、一縷の望みを繋いでいた以仁王はその地位全てを失った。
「平家、許すまじ……清盛、許すまじ……」
その無念を掬い上げたのは、都に息づく源氏の雄、頼政。
彼は同じ一族である新宮十郎行家を使いとし、各地に雌伏する源氏の勇士へ決起を促し始める。
それは栄華を極めた平家の世に、荒波が生まれた瞬間であった。
清盛の手早い対処により、およそ一月足らずで以仁王と頼政は命を落とす。
だが、その動きは、歴史を変える一石を投じる事となった。
八月、伊豆の頼朝、甲斐の信義が挙兵。
九月、信濃の義仲が挙兵。
平家の世に、再び源氏の名が轟いた。
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