鞍馬の少年

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「立派な太刀だ。振り回すうち、最近橋に現れるという鬼に盗られるぞ。奴は千本の太刀を集めるという話だからな」 決して、身の丈が突出している訳ではない。体格も、姫の様に細く弱々しい。 そんな少年の何処から、この自信に満ち溢れた強い言葉が紡がれるのか。 『カムロ』の先頭に立つ者は、早くも震え出した手を無理に奮い立たせながら刀を引き抜いた。 「喧しい!今度は夜の闇に倍の人数だ!今度こそ平家の力を解らせてやるっ」 自身の度胸に火を付ける様な鬨の声を上げながら、赤の直垂が群れを成し少年になだれ込む。 「底が知れたな」 少年は、その美しい顔からは想像もつかない侮蔑の微笑を浮かべ、大きく身を躍らせる。 羽の様に軽々と浮かび上がった細身の身体が、『カムロ』のおかっぱを蹴り付けた。 『遮那王』はそのまま群れる『カムロ』の頭を渡り、向こうに構える大きな橋に飛び移る。 欄干に腰掛けて見下ろす少年に手を伸ばす『カムロ』達だが、身体二つ分はある高さでは届きようもない。
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