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「美緒、大丈夫か?」
そう言って倒れ込んでしまった美緒の顔を覗き込む。互いの距離は、かなり近い。
「ふえぇ、大丈夫です…、だ、大丈夫ですぅ……」
「そうか?ならいいんだけど。じゃあ、行こうか。」
これ以上はマズい気がするからな。色々と。
「は、はいぃ…」
美緒の手を優しく引っ張って立たせてあげる。この時も美緒の顔は真っ赤だった。
こんなにずっと真っ赤で体は大丈夫なのか?
「歩ける?」
「はい…、すいません、何か、色々と……。」
申し訳なさそうな顔をしてそう言う美緒。
うぅ、良心がズキズキするぜ…。
「別にいいよ、全然平気。えーと、じゃあ、行こうか。」
再びそう言って、歩き出す僕。美緒の手を握ったままで。
「あ、あの…、章人君……?」
「ん?どうした美緒?」
「その…、手が……」
もう見慣れた赤い顔で、握った手を見つめながら言う美緒。
「あ、ごめん。嫌だったら放すけど…」
僕の、美緒に対する最後の意地悪。
「い、嫌なんて…、そんな筈ないです……。出来ればずっと、握ってて下さい……」
…。
あまりにも純粋な彼女の言葉に、不覚にも、僕まで顔が赤くなってしまうのだった。
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