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「章人…君……?」
口を開けて呆けてしまっていた僕の意識を引きずり戻してくれたのは、僕の後ろから、とてとてと歩いてきた少女の、何気ない呼びかけだった。
「どうしたんですか?こんな所で…。」
「いや、別に…。」
じー、と僕の目を上目遣いに覗き込んでくる彼女。
その顔からは僕への心配がひしひしと伝わってきて、何だか悪い事をしたような気分になる。
「本当に…、何でもないんですか?何かあったんなら言って欲しいです。美緒に出来る事だったら何でも、章人君にして上げたいです…。」
「ありがとう、本当に大丈夫だから。そんなに心配すんなって。」
そう言って頭を撫でてやると、花が咲いたかのように可愛らしい笑顔を見せてくれる美緒。
「あ、そうだ…!美緒、章人君にお弁当作って来たんです。章人君、いつもコンビニのお弁当だから、それじゃ体に良くないって思って、その……。頑張ってはみたんですけど…、味、あんまり自信なくて、口に合わないかも知れないけど…、もし迷惑じゃなければ、えっと…、あうぅ……」
最後まで言い切る前に顔を真っ赤にして、俯いてしまう美緒。
いつもの事ながらこいつは全く。
本当に可愛い奴だ。
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