2/14
前へ
/20ページ
次へ
切符を改札に通して、街に出る。 看板には代々木駅とかかれていた。 「…無事に着いた……恵梨に連絡しなきゃ」 慣れた動作で電話をかける。もちろん相手は恵梨だ。 数秒の呼び出しベルの後、プッと言う機械音の後に馴染みある声が響いた。 『はぁい』 「恵梨?代々木つきましたぁー北口ー」 『りょーかい、吉野家近くにいて』 「ういっす」 携帯をポケットにしまいこむと吉野家を見回し探す。 ソレはほどなくして見つかった。由奈は吉野家に向かって歩き出す。 「(…それにしても、オーディションかぁ……)」 細身のジーンズは、汗でもう少し湿り始めていた。 胸がそれなりにあることしか取り柄がないと思っている由奈は毎度胸を強調した服しか着ない。 そのためか胸元にも日が直接照ってかなり暑い。 これからオーディションと言う緊張と、嘆きたくなるこの暑さ、両方にハーッと大きくため息を吐いた。 吉野家が少し路地裏にあった事が救いだろう。 日影で恵梨を待つ事が出来た。 しかし、路地裏と言えど流石は都会と言うべきか…人通りは決して少なくない。 しかも通る人殆どが由奈を振り返りみる。 「(…あれだな、コレからは少しコスだけじゃなく普通の服も買うべきかな)」 目の前を通る人を見、自分の格好を見ると少し泣きたくなった。 なんとも、田舎から出てきました、と主張するかのようなファッションセンス。 「(そりゃ、見るよなぁ…あーっもう!だから都会嫌い…)」 ガシガシとロクに整えてもいない真っ黒い髪を掻くと、奥から人影が見えた。 こちらに走ってくる。 「………?」 白いヒラヒラの服。 かと言って、ロリータファッションではない服装。至って普通の服だ。 彼女?は由奈に駆け寄ると肩をたたき 「お待たせ」 と呟いた。 その言葉で確信に変わる。 「……恵梨…?」 「ん?そだよ、どうしたん?」 「(どうしたも…さぁ……)」 もう一度、上から下をじっくり見てみる。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加