6人が本棚に入れています
本棚に追加
真っ黒いストレートの長い髪の毛。
胸元があいている大胆な服。
しかも白いレース。
ふんわりとしたスカート。
そして白いニーハイにラバソ。
「…どうしちゃったの」
「あ、これ?ちょっとねー」
語尾が少し上がった口調。
余程機嫌が良いのだろうな、と推測する。
だが、いつもの恵梨とは予想もしなかった格好だ。
『いつもの恵梨』はスカートを履くと言うよりズボン派で、ラフな服装が多かった。
「…彼氏?」
「殴るよ」
「ごめん……」
この殴るよ、にも一切怒気は混ざっていなかった。
寧ろハートが混じってそうな…甘い、響きが含まれている。
由奈は頭に疑問符を浮かべつつも先導してくれる恵梨の後ろをついていった。
「(…ちょっとスキップ入ってるし)」
余りにも彼女に似合わないノリに心の中で笑うも、吉野家を出た後の曲がり角直ぐに学校の看板があった。
「近っ!!」
「でしょ?コンビニも近くにあるのよ」
便利だよねぇと笑う恵梨がとても不自然に見えて、由奈は苦笑しかできなかった。
「(それにしても…)」
由奈はもう一度、恵梨の格好を眺めてから自分自身を見た。
「(…このオシャレ度の違いは何だよ……)」
重々しいため息をまた吐いて、オーディション会場である学園を見上げた。
数人並んでいて、何かを受け取っている。
「ほら由奈、並んできて」
ニコニコしながら恵梨は由奈の背中を押して無理矢理この列に並ばせる。
由奈は列を指差して恵梨に聞いてみた。
「……なにこれ」
「…あのさ、普通に考えて受け付けってわかんない?」
「……………ああ…そっか」
ポンッとわざとらしく手を叩いて納得すると、今度こそは怒気の含まれた声で
「殴るよ」
と呟かれた。
ついでに、頭を叩かれつつ。
最初のコメントを投稿しよう!