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今や都市伝説になりつつある“蒼桜姫”
卓越した身体能力と天使の如く優しき澄んだ心を持つと言わるる“蒼桜姫”の存在は年を重ねる毎に忘れ去られていった。
欲望渦巻く夜の新宿。
酒に溺れる男女がキャバクラやホストクラブがたくさんある街だ。
「ちょっとお嬢さん、ここはお嬢さんが入っていいような場所じゃないよ」
声を掛けられた小柄な少女は体ごと年若い男を振り返った。美しい黒髪はウェーブがかかり、瞳は透き通る蒼色だ。
『そんな言われても…家ここだから』
「バカヤロ~この方がお嬢だ!!すいやせんお嬢、新入りなもんで…」
男の後ろから青年が出て来た。女と間違う顔立ちの青年が男を退す。
『ってかナリ、お嬢って呼ぶのは止めてよ…名前でいいって言ってるじゃん』
「すいやせん、涙姫さん」
少女の名は神楽涙姫。
この建物の2階にある“神楽組”をまとめる総長の愛娘だ。小さい頃からこのナリこと永月成実を兄のように慕っている。
「いつかお嬢も…姐さんみたいになるんすかねぇ…」
姐さんとは涙姫の母の事。
“蒼桜姫”と呼ばれていた。
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