第3章 ~青雷~

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『身辺護衛を解くのは嫌で、でもこっちは仕事してもらわなきゃ困る。なら、仕事しながら護衛してもらえば良いだけの話よ。  ま、簡潔に述べると。アンタ、彼女に付いてって仕事を手伝いなさい。いくら下手な魔術師でも、居て足手まといになる程度ではないわよね?』  おい、わざわざ危険な夜に出掛けた上で護衛してもらうだと。冗談はよしてくれ。 「待て。それのどこが妥協案なんだ?」 『十分妥協してあげてるじゃない。  アンタから護衛が外れる事もなく、かつ仕事をこなすのだから最善よね? 本来なら無理矢理にでも引き剥がすのを、我慢して妥協し、互いが良い形になる提案ね。  あと、これ以上妥協する気は無いわ。この案に文句があるなら彼女を返しなさい。これは命令よ』  最善、良い形だって? 安全域に居る自分が、危険に身を置く事になるというのに。それのどこが最善か。  命令されてが、文句を呟きたくなる。 「……お前、横暴過ぎるぞ。  だいたい、自分はこの争乱になんて参加したくないし、そもそも行方不明事件なんて関け――――」 『関係ないなんて言わせない。  確かに、アンタと行方不明者の関係は赤の他人よね。でも、アンタが妥協案すら呑(の)まない事で、救えた命を見捨てるかもしれないのよ。  アンタの頷き1つで解決する問題。なのに、関係ないなんて絶対に言わせないわ』  声色に怒号が混ざり、口調には厳しさが現れていた。  察するに。この妥協案が最大譲歩で、それ以上はアンタに情けを掛けるつもりはない。というところか。  地主だからこその責任感。それがあるかも知れないが、こちらも身の安全が掛かっているが故に引き下がれない。
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