第3章 ~青雷~

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「危険な場所に自らが出向いて、その上で護衛してくれってのは迷惑じゃないか?  護衛なら、危険な場所に近付く事はなるべく遠ざけるものだろう」 『確かにそうだけど。事態はそんな事を言っている場合じゃないの!  一応は、護衛しながら仕事も出来るじゃない。アンタの安全の保証なんか2の次。  それにね、この街から出て行けば安全よね? 私としては、安全に争乱と関係なく生活したいなら、今から荷物まとめて街を出て行くのを勧(すす)めるわ』  出て行けば、この家を好き勝手に使われてどうなる事になるか……。帰って来たなり大掃除なんてのはゴメンだ。  でも思い直してみれば。完全な身の安全の保証がある選択肢を選ばずにいて、妥協案すら文句ばかり言うのはさすがにだな。  とはいえ、護衛役をするから身の安全は任せろと言ってきたのはエレア。甘える形だが、引き受けさせたからには今の生活は変えたくない。  言い返しをどうしようかと考えた結果。時間延ばしの意味で相手に言う。 「とりあえず、エレアに話をしてみない事には結論は出せない。  それとも、今ここで結論を出さないといけないのか?」 『それもそうね。彼女の意志を無視して、こちらだけで決めるのも悪いし。  分かった、返事は今夜の11時まで待つわ。それまでに2人で話し合って答えを出して、私に伝えるのよ。  なお、返事が無かった場合は解答放棄として、私が直接彼女を引き取りに出向くわ。それで良いわね?』  時間延ばしに成功。「あぁ、それで構わない」と返し、電話を切ろうとしたら。 『私を幻滅させないでよね。良い返事、期待してるわよ朧木』  なんて、最後に勝手な事を言いってから切りやがった。期待されても困るものだ。  結局、相手の良いように話を動かされた気にしかなれない。どうにも、押し切られた感じだな。  受話器を戻し、さっきの事について話し合いをしないとならない為。エレアがいる部屋へと向かった。
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