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「両方捨てなくても良い選択が1つある。
エレアの負荷になるだろうが、護衛しつつ仕事をしないかってのが案だ。それなら、どちらか片方を捨てる事なく両方をこなせる。ただ、苦労は計り知れないがな」
「払うのが苦労だけなら喜ばしい。
ただ、その案に乗っても大丈夫か?」
疑心からなのか。簡単に信じてくれなかったので、言葉を足してやろう。
「地主様からの提案だ。嘘ではない。
仮に嘘だとしても、こんな嘘を言って何の益が存在する? 人をぬか喜びさせて笑う程、腐った心など持ってはいないさ。
さっき電話で提案をされたが、1人で決めるものでないと思い相談に来た。自分としては、エレアの意見を聞きたいのだが」
どうだ? と、言わずして態度で聞けば。先ほどまでとは変わり、キリッとした顔付きになって。
「そうなら答えは考えるまでもない。負荷があろうが、案に反対などするものか。
あ、でも……」
途中までは言ったのだが。一瞬と晴れやかとなった顔をまた曇らせて、今度はおずおずと自分に謝る。
「1人だけ喜んでいてすまない……。
定高の事を思えば、こちらの仕事に付き合わせるのは駄目だな。危険と隣合わせでは納得しないだろう。
地主には本当にすまないが、その案を諦めるしかなさそうだ」
自分を思うからこそ、1度決めた約束を守り通すと選択したのだな。
だが、その選択の先に待つのは地主自らの引き取り。あいつを納得させるのに言葉では無理難題に近い。
あとは自分次第。なんて、こんな役回りになど立ちたくなかったのだがな。巻き込まれた今ではもう遅いか。
自分の思いを、言葉にして告げる。
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