第一章

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 顔をふせ応える空月を真っ直ぐに見つめながら言葉を続ける。 「失礼ですが書類等の関係で貴女の名前を調べさせていただきました。ですが…」 「私の戸籍が無い、そうおっしゃりたいんですよね。」 「そうです。こちらとしては貴女の本名が知りたいのですが。」 「空月…それが私の名。それ以外の名は持っていません。」 落ちてきた髪を手で押さえながら静かに微笑む。  ガチャッ 「お待たせ。」 更に問いかけようとした瞬間、扉が開き花瓶を抱えた聖が戻って来た。 花瓶をサイドテーブルに置くと空月に笑いかける。 「ここで平気?」 「ええ。有り難うございます。」 花を見て笑う空月の様子にこれ以上聞くのは無理だと判断した竹流は挨拶だけすまし病室から出て行った。
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