プロローグ

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それはとてもとてもおいしいモノだった  それはとてもとても甘い香りがした それはとてもとても血を躍らせた  それはとてもとても満たされるモノ   これはなんと甘美な味なのだろう  これはなんと甘美なモノなのだろう この世にこれほど甘美なモノがあるとは  一時しか満たされぬ空腹が満たされてゆく   もっともっとこれが欲しい  もっともっとこれで満たされたい もっともっとこれを味わいたい  もっともっとこれを感じたい   この甘美な味を忘れるなど出来ない  この甘美な味を求めずになどいられない この甘美な味の虜になる  この甘美な味は全てを狂わせる   あぁ、この世にこんなモノがあろうとは  なぜ気付かなかったのだろう もっとこれが欲しいと全身で求めて止まない  この甘美なモノから逃れる事など出来ない   紅月夜ごとに私は求めるであろう この甘美な味のモノを 全身全霊で求めて止まないモノだから        ―紅月夜に獣がめざめる―
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