第二章

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 冷めてきた紅茶を口に運んでいると携帯のコールが響いた。 ポケットに入れていた携帯を取り出すと会社の番号が表示されている。 「私だ。…ああ、わかっている。…いやいいすぐ近くに来ている。ああ、では。」 ピッ 携帯を切ると少し残念そうにため息をつき紅茶を飲みほした。 「紅茶有り難うございました。とても美味しかったです。」 「いえ、こちらこそご迷惑をおかけしました。」 「では、これで。」 そう言って席を立ち扉へと向かったがノブに手をかけた所で立ち止まり振り返った。 「…また来てもいいですか?」 「…ええ、お待ちしてます。」 空月に会釈をしてから竹流は会社へと向かった。      空月と偶然再会した翌日から竹流の日課に新しい事が加わった。 それは学院帰り、会社に行くまでの時間を喫茶店で過ごす事。 大通りから外れているうえに看板も無いせいか他の客に会う事は殆んど無く空月と二人で話している事が多かった。 沢山の事を話すわけではない静かな空間と時間がとても心地好かった。 そして少しずつ知ってゆく空月に心が揺れた。
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