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電話を受けやって来た救急車で運ばれた女性はそのまま手術となった。
女性に付き添って来た少年は手術室のドアを見つめると一旦外へと出て行った。
携帯で誰かと話しているようだがその声は暗く二、三言話すと切ってしまった。
手術室前の椅子に座るとただ女性が助かる事だけを祈る。
暫くすると誰かが歩いて来る姿が見えた。
少し癖のある焦げ茶色の髪、つり目がちの黒い瞳に眼鏡をかけ黒いスーツを来た男が真っ直ぐに歩いて来る。
「聖(さとる)」
「あ、兄貴…」
男に呼ばれ少年は辛そうな顔で見上げた。
「まだ手術中か?」
「うん、俺のせいだ。」
「起こってしまった事は仕方ない。ただ責任は取れ。解るな?」
「うん、解ってる。きちんとするよ。」
「お前を襲った奴等はこちらで調べる。分家の方は任せるぞ。」
「解った。こっちが終わったら報告に行くから。」
「ああ。」
男はそれだけ言うと来た廊下を戻って行く。
遠ざかる男の後ろ姿を見送った後、手術室のドアを見つめる。手術中のランプはまだ消えない。
崩れ落ちる様に廊下に座ると顔を伏せ祈り続けた。
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