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部屋に戻った聖は暫く考えてから携帯のボタンを押した。
トゥルル…
「はい。」
一コールで出た相手はやや歳をとっているような落ち着いた声の男だった。
「俺だ。」
「聖様、事故に遭ったと聞き心配しておりました。お怪我は?」
「無い、その場にいた人に助けられた。」
「それはようございました。聖様に何かあっては大変ですので。」
「助けてくれた女性は重体だが?」
「ただの国民です。聖様と比べるべくもありません。」
「…」
「それよりもあの方とお会いになられたのでしたら御早めにお戻り下さい。そちらは危のうございます。」
「嫌だっ予定通りにする。」
「聖様そのような事を申されますな。」
「嫌だ、久しぶりに会ったんだ兄貴とゆっくり過ごす。」
「分かりました。ですが予定を延ばされませんように。」
「分かっているっ」
プッ
ドサッ
少し苛ついた感じで電話を切るとベッドに腰をおろす。
「ふぅ…」
自分の足に肘を付き額に手をあてると短いため息がこぼれる。
先程の電話の相手を思い出す。自分が分家に行った時から仕えてくれている補佐役で嫌っているわけでは無い。
ただ分家は本家にいる兄を良く思わずいつか本家を潰そうとしている奴等が多い。
だからこそ自分はこっちにも居なくてはと思う。
自分は兄を助ける為にいるのであって潰す為にいるわけではないのだから。
ボフッ
そのままベッドに倒れ天井を眺めていると段々と意識が遠のき眠りへと落ちていった。
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