第一章

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清の南端に属する都市、広州。 九年前に起きた戦争の代償として、英国に開港を迫られた港町。 時が流れるにつれて貿易船の数は次第に増え、地に降り立つ外国人も少なくない。 その中で外国の動きに不安や不信感を抱く者も出てくるが、当然のように市場は栄え、金銭の流通も著しい。 ひらけた路上は毎日のように露店で埋め尽くされ、買出しや食事をとるために訪れる人々であふれる。 そこに、ひときわ賑わっている箇所があった。 中心には地面に転がっている中年らしい男と、少女が二人。 その三人の周りに、円を描くように人々が群がっている。 「何しやがるこのクソガキ!!」 言われた少女のうちの一人が、鋭く男を睨み返す。 「それはこっちのセリフだ。お前この娘に何をしようとした」
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