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「唯、いつも言ってるだろう。ああいう馬鹿にはできるだけ近寄るな」
広州の港は市場から少し離れたところにあった。この港に着くのは主に貿易船だ。船の荷を積み降ろしする人々がまばらに行き交っている。時折吹く風に濃い潮の香りが混ざり、鼻先をかすめていく。少し西に傾いた太陽は、それでも眩しく輝き、上へ上へと枝を伸ばす木々を明るく照らしていた。華蓮は海を背にした石段に腰をおろし、目の前に立っている少女を軽くにらむ。
「うん。ごめんね華蓮。ありがとう」
「話しかけられても適当にかわして逃げるんだぞ。のこのこついて行くな」
「うん。わかった。だいじょうぶだよ」
その間の抜けた返事にほんとにわかってんのかなとか思いつつ、華蓮は海の方へ目を向けた。
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