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扉の軋む音に、敏感に反応する。
机につっぷして転寝をしていた一夜は、音のしたほうへ目を向ける。
そこには、朝露に濡れたクリスがマントの露を払っていた。
「おかえり!」
満面の笑みを浮かべながら、クリスを迎える。
その元気な声に、驚いたのか目を丸くしてクリスは自分を見ていた。が、すぐに目をそらす。
「起きていたのか・・・?誰かきたのか?」
栗栖が帰ってから、カップを片付けていなかった。それに気付いたらしい。
「うん。栗ちゃんが来て、ちょっと話して帰ったよ」
栗ちゃんと耳に入るや否や、クリスは眉間にしわを寄せる。
「・・・話とはなんだ?」
「僕の迷いは何なの?って。」
正直に答えると、やっぱりという表情でクリスは不快な表情のままだ。
「で、言ったのか?」
「言ってない・・・でもそれで気付いたんだけどさ」
「・・・何だ?」
「クリスは何で何も聞かないの?」
「は?」
クリスが素っ頓狂な声を出した。きっと昨日のことを聞かれると思って、身構えたのに予想と違う質問だったので驚いたのだろう。
「そんなもの、ムリに聞くものでもないだろう。話したいなら聞くが」
「うん。そう言うかなって思った。でもさ・・」
僕は一呼吸置いた。
「僕を早く追い出したかったら、さっさと聞いて迷いを取り除いたほうがいいよね?」
「それは・・・」
栗ちゃんが話をしてきたときに、初めて気付いた。クリスがそれをしないってことは・・・
「それに、僕みたいに遭難しててもクリスはいつも助けないんだってね」
僕はクリスに悟られないように、徐々に近づいていく。
クリスは目が泳いだまま考え込んでいるようだ。
「ねぇ。昨日、なんで僕にキスしたの?」
「!!?」
僕はクリスの傍まで来て、目を見て聞いた。
近づいていたことにも、ここで昨日のことを質問してくることにも驚いたようだ。
「・・・それは・・・」
僕の心は期待に膨らんだ。
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