ザッキルテへの告白

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「ひっ。」ベラリアが声をあげた。アノーマが何の予告もなく傷口に湿布を押しつけたからだ。 「いいわ。」アノーマは言った。 「校長ってひどいと思わない?」ベラリアが下着をはきながらぼやいた。「よく生徒をこれだけ痛めつけられるわね。」 「あなたが悪いことをするからでしょ。」 「ははっ。」その甲高い笑い声がアノーマの耳に不快に響いた。彼女はベラリアが嫌いだった。ベラリア=スナイツはこの学校で1番の問題児だったが、ドラマなどにありがちな弱きを助け権力に盾突くような反逆児ではなかった。自分に都合のいい者だけを脇に従え、気に入らない者は徹底的にいたぶる暴君だった。これまで何人かいじめの標的となったと思われる生徒の手当てをアノーマはしている。彼女達は決して本当のことは言おうとはしなかったが。 「ありがとう、ハルミエ先生。」その切れ長の目でいかにも媚びるような流し目をくれながら、ベラリアは保健室を出ていった。同じ学生だったら絶対に友達になりたくないタイプだ、アノーマは思った。もっとも向こうの方でも勉強ばかりしている暗い女など願い下げだろうが。
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