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「私、彼女に謝ります。赦してもらえるまで何度でも。今日は本当にありがとう。」
少女は立ち上がると扉を開け部屋から出ていった。相手の女性はその間身動きひとつしなかった。
少女が出た扉の向かい側、女性が背にしている壁についているもうひとつの扉が開いた。そこから入ってきたのは髪がすっかり白くなった初老の女性だった。背が高く、とても痩せているその体は、背筋をぴんと伸ばした姿勢とあいまって細長い棒を思わせた。だがその広く前に突き出た額と、強い輝きを帯びる目と、きりりと結ばれた口元を見る者は、彼女が決して脆い小枝ではなく硬い鞭であることを知るのだった。
「ザッキルテ、今日はもういいわ。」彼女は座る女性に静かに語りかけた。「部屋にお戻りなさい。食事の用意がしてあります。」
ザッキルテと呼ばれた彼女はゆっくりと立ち上がると、今声をかけた初老の女性とその後ろに立っていた若い女性の横を、まったく目をくれることなくすりぬけていった。眼鏡をかけた若い女性は彼女を観察していた。さらりとゆれる長髪からのぞく横顔には穏やかな笑みがはりついたままだった。結構豊満な体を締めつけているその服に軽い違和感を覚えた。
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