ザッキルテへの告白

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「彼女が『聞き役』ですか。」若い女性はきいた。 「そうです。」初老の女性は言った。「続きは校長室で話しましょうか、ハルミエ先生。」 掃除の行き届いた廊下を進み、アノーマ=ハルミエが招き入れられた校長室は、天井にまで達する書棚から奥に据えられた大きな事務机まで、すべてがあるべき場所へ整理整頓された部屋だった。ここに勤めるならばこれくらいするのは当然だと、それは片付けが大の苦手なアノーマに無言の圧力をかけているように思えた。 アノーマはすすめられた来客用のソファに腰を下ろした。相手はテーブルを挟んだ向かいのソファに座るとほぼ同時に口を開いた。 「この学校は私の父が自ら考案した教育システムを実現するために創設したものです。」 そう言いながら彼女は事務机の後ろの壁に目をやった。そこには彼女によく似た顔立ちをした頭がはげ上がった男性の巨大な肖像画が掛けられていた。 「当時遅れていた女子教育を進めるため、教育学者だった彼の理論を基に考え出された、全寮制による全人格的な教育システム。『聞き役』とはその不可欠な要素です。」 メリキドル女学校二代目校長クレデリカ=メリキドルは言った。
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