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「彼女は、その、本当に何も理解できてないのですか。」アノーマは尋ねた。
「20年ずっとザッキルテを見てきましたが、言われたことを理解している様子も記憶している様子もまったくありません。だからこそ生徒達もどんなに言いにくいことでも彼女にだけは告白できるのです。」
「記憶というのは意外とくせ者ですよ。意識の上から消えても無意識のうちに残ったりしてるものです。」
校長は首を傾げた。「ハルミエ先生は医学校で脳の方も勉強されたのですか。」
「いえ、そちらの方は。発達心理学を少しやったのです。」
「まあ、それは頼もしい。やっぱり校医というのは生徒の体だけでなく心も理解しておりませんとね。」
あからさまなお世話にアノーマは苦笑した。「ちょっとおききしてよろしいですか。」
「何でしょう。」
「先程ザッキルテが生徒の話を聞いていた部屋、置いていた用具の割には部屋が広すぎたように思えたのですが。」
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