ザッキルテへの告白

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「ああ、あれですか。」校長は微笑んだ。「あれは生徒を安心させるためです。あれだけ壁が離れていると、壁の向こうで誰かに立ち聞きされる恐れはないでしょう。」 「そうだったのですか。」 「それとザッキルテの服、あれは制服から作られたものですが、ポケットをはずし、体にぴったりくっつく小さめのサイズを着せてあります。盗聴器を隠していないと生徒に見せるためです。」 「生徒の告白を聞いた方が隠された問題を知るのにいいとは思いませんか。」 校長は首を振った。「万が一話した内容が私達に漏れているとわかれば、生徒達は二度と告白しに来なくなるでしょう。本当に問題にしなければならない告白なんて数十件にひとつあるかないかですしね。それにすべてを知らない方が教師の精神衛生にもいいのです。生徒に教師は立派な人格者だという幻想を与える必要があるのと同様、教師にも生徒が純粋無垢な天使だという幻想が必要なのですから。」 なるほど。
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