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ロボットの中に入り、簡単な機械構造を理解してから少年に語りかける。眠りを妨げることになるが、日中にやるよりも目立たないだろう。少年の名前は――。
『サトシくん』
呼び掛けるとゆっくりと、彼が目覚める気配がした。ベッドの上で目を瞬いているのが暗がりで見える。
「……だれ?」
『ここだよ』
ロボットの手足を動かし、枕元で手を振ってみせる。サトシは当然ながら驚いた顔で口をぽかんと開けていたが、やはり子供は柔軟なのか、輝くような笑顔に変わった。
「アンディがしゃべった!」
『し、しずかにして』
ベッドの上に起き上がりロボット――私を掴むサトシは興奮している。このまま倒れられでもしたら目もあてられない、そう思い私は彼を落ち着かせようと、サトシの脳波を少し穏やかにいじくった。
『うるさくすると私は玩具に戻らなくちゃならない。サトシくん以外に見られてはいけないからね』
「そうなんだ、わかった」
利発な子供のようで、私が脳波をいじくるまでもなく彼は冷静になった。しかしわくわくと目を光らせているのは変わらない。ロボットが喋ったのだから、当然だろう。
『……ところで、私の名前はアンディなのか?』
「そうだよ。スーパーロボットのアンディ。自分の名前、しらないの?」
声のトーンを落として話しかける。私はロボットの首を振ろうとしたが稼動しなかったので、両手を上げてノーの意思表示をした。
「アンディ、しゃべれたんだね。いつから? なんで僕に秘密にしてたの?」
『まあいいじゃないか。サトシくん、君は願い事があるんじゃないのかな?』
質問攻めに答えるのはやめにして、本題に入る。同時に彼の脳味噌の引き出しから素早く未来の映像を引っ張り出して、わかりやすいように呈示した。
「願い事? あるよ!」
『それを言ってごらん』
「僕が……僕が死んだあとの未来を見てみたいんだ」
私は、彼の言葉に少なからずのショックを受けた。
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