第1章

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少し歩いた所で、俺は振り返った。 「もう見えないな…」 兵士達の姿が見えないのを確認し、少女に近づいた。 「もういいぞ、好きな所へ逃げろ」 俺はそのまま首都のある方へ歩き始めた。 しかし、少女は俺の後をついて歩いてくる。 数分歩いた所で、横目でチラッと後ろを見る。 まだ着いてくる…。 そのまま振り返り 「どうした?もう演技をする必要はないんだぞ?」 そう言うと、少女がゆっくりと口を開いた。 「私に、帰る場所はありません」 「…それで?そんな格好で戦場に出て死ぬ気でいたのか?」 戦争で家族や家を無くす輩は腐るほどいる。 しかし、そんな奴らに一々同情してたらきりが無い。 この戦争が終わらぬ限り…。 「…いいぇ、私は歌を歌いに来ました」 「歌?」 思わぬ言葉に耳を傾ける。 なんだこの女…。 戦場で歌を歌いに来たなんて、死んでも思いつかないぞ。 「まぁなんでも良いさ。好きな場所へ行け」 そう俺が言うと、少女は俺と違う方向へ歩き始めた。 一体なんだってんだ…? 少し歩き始めた所で気になる。 まさか、また戦場で歌を歌いに行ったなんて事は…。 足取りが段々と重たくなり。 結論が出た時には、足取りは完全に止まっていた。
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