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少し歩いた所で、俺は振り返った。
「もう見えないな…」
兵士達の姿が見えないのを確認し、少女に近づいた。
「もういいぞ、好きな所へ逃げろ」
俺はそのまま首都のある方へ歩き始めた。
しかし、少女は俺の後をついて歩いてくる。
数分歩いた所で、横目でチラッと後ろを見る。
まだ着いてくる…。
そのまま振り返り
「どうした?もう演技をする必要はないんだぞ?」
そう言うと、少女がゆっくりと口を開いた。
「私に、帰る場所はありません」
「…それで?そんな格好で戦場に出て死ぬ気でいたのか?」
戦争で家族や家を無くす輩は腐るほどいる。
しかし、そんな奴らに一々同情してたらきりが無い。
この戦争が終わらぬ限り…。
「…いいぇ、私は歌を歌いに来ました」
「歌?」
思わぬ言葉に耳を傾ける。
なんだこの女…。
戦場で歌を歌いに来たなんて、死んでも思いつかないぞ。
「まぁなんでも良いさ。好きな場所へ行け」
そう俺が言うと、少女は俺と違う方向へ歩き始めた。
一体なんだってんだ…?
少し歩き始めた所で気になる。
まさか、また戦場で歌を歌いに行ったなんて事は…。
足取りが段々と重たくなり。
結論が出た時には、足取りは完全に止まっていた。
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