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「……また今度か」
それはいつになるのかなんて言った本人である紫苑にもわからない。
しかし、乗せてくれると約束してくれただけでヒナタは微笑んだ。
すると、隣にいる爺はわざとらしく一回せき込んだ。
「お嬢様、話に聞いていました方と大分違っていましたが」
「あぁあれ? あれはあたしの勘違い。今日ちゃんと話してみてやっとわかったけどあいつ、意外といい奴だった」
「それはよかったですね。では、そろそろ屋敷の中に入りましょうか。体が冷え込むと思いますので」
「そうするわ」
ヒナタは後ろに振り返って屋敷の中に入っていく。
そして鼻歌を歌いながら廊下を歩いていく。
(お嬢様が家族以外の男性の方相手に楽しげな表情をするなんて何年ぶりでしょうか。今日の朝まであんなに嫌っていましたのに。まぁ、過去のことは忘れましょう。しかし、まさか――)
「爺、今すぐ夕飯の用意を始めさせて!」
「かしこまりました」
爺の考えはヒナタが呼んだことで途中で途切れさせる。
そしてゆっくりと扉を閉めてから調理場へと向かっていく。
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