紅の季節

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始業式も思っていたより早く終わり、その日は弓道場に入るのも自動的に早くなった。 数週間ぶりに会う仲間は少し日に焼けていて、本来なら練習どころではなく話に夢中になっている所だが、楓は違った。 まずはウォーミングアップという事で与えられた5本の矢。 3年生は次の大会で引退するにも関わらず、小さな声で何かと喋り続けていて、途中でクスクスと笑い声が聞こえてきた。 ――スパンッ 「うわ、楓凄い……百発百中じゃん」 その3年生の先輩達を尻目に、楓の矢は全て的に命中する。 百発百中、それも当たり前だ。夏休みをほとんどと言っていいほど弓道に費やしたのだから。 けれど周りの皆にはそんな事は一言も言わなかった。 隣で弓懸を填めながら命中率の良さに圧倒されているのは、楓と同じ2年生の弓道部員、桜井 美樹。 人よりリーダーシップがあり、次期部長としてこれからの事を任せられていく人物だ。 「やっぱ楓がなればよかったんじゃない? 部長」 「私はそんな柄じゃないよ」 構えた弓を下ろしながら、美樹に向かって小さく首を振った。
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