紅の季節

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馬鹿みたいに口を開けたまま、楓は出しかけていた言葉を失った。 もう目の前で朋子が心配そうにしているのすら気付かない。 窓際の席に座り日の光を浴びている彼が、探していた人物だと確信した。 友達とボールを投げ合っているその姿を見間違える訳がない。 夏休み中ずっと見てきたのだから。 「楓……?」 様子のおかしい友人を見て、朋子は不安げに話しかけてみる。 だが楓は一向に返事はしてくれず、反応すら示さない。 何が起こったのだろう、と楓の視線の先を辿れば答えはすぐに出た。 「あー、あのバスケ部」 「ッ知ってるの!?」 今まで何をしてもピクリとも動かなかった楓が、朋子のポツリと呟いた一言に過剰に反応した。 やはりいつもとどこか違う楓。 朋子はいぶかしげに眉を潜める。 だって有名だし……と一人ごちながら、チョイチョイと楓を手招きして二人で頭を寄せ合う。 「うちの学校のバスケ部、わりと有名みたいでさ……あ、まぁアンタはそういう事興味ないみたいだし知らないだろうけど」 話しながら楓の顔を見ると、まるで知らなかったというような表情をしていたので、慌ててそう付け加えた。 それでも尚、早く早く、と次を急かすような瞳をされて少々呆れながらも朋子は話を続ける。 「えっと、それでなんだっけ……あぁ、この前の試合で関東大会出場決定したって聞かされなかった?」 「…………」 「知らないのね……」 明らかにその事を知らなかった楓は黙ったまま苦笑いを溢す。 しかしそれを見ただけで、長年の付き合いがあっての事だろう、直ぐ様その意味を汲み取り本日何度目かのため息をついた。
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