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生きるのなんて、死ぬのなんて。
正直もう、どうでもよくて。
「呼吸を止めたら死ねるかな」
そんな事を、ぼうっと考えながら何気無しに呼吸を止めてみた。
でも上手くいかないものね。
身体が酸素を欲しがるの。
生存本能ってヤツかしら?
「……ッ、ゲホッ……苦し……」
あーあ……なんだかなぁ。
「手首切ったところで後々、痛いだけで死ぬ訳じゃないしなー」
別に私は自殺願望者でも死にたい訳でもない。
ただ生きるのも死ぬのもどうでもいいだけ。
だから別に生きてる事を実感する痛みも死ぬかもしれないといった苦しみが欲しい訳でもない。
かといって、
「生きたい訳でも死にたい訳でもなかったら……私は一体どうしたいんだろ」
自分で、どうしたいのかさえ解らないんだから本当、手に負えない馬鹿だよ私は。
そんな時だった。
「は?」
私に絡んできたから痛め付けてやった数人の床に転がった男達を呆気に取られるような顔で見遣る彼に出逢ったのは。
「お前さー、俺の組の下っ端連中に何してくれちゃってんのー……殺されてーのかよ?」
無造作に伸びた金糸の髪に見え隠れする冷たい紅蓮の瞳。気持ち悪いくらいの笑みを讃えるように弧を描いた彼の口許。
そして放たれる殺気に何故か私は高揚した気分に包まれた。
そして、またくだらない考えを浮かべるんだ。
ああ、絡まれた時にソコらに居そうな一般人の奴らじゃないとは思ったけど、やっぱそーだったんだ……なんて。
だけど、そんな考えを巡らすのも一瞬のうちで次の瞬間には私は彼の言葉に対応する言葉を口から放っていた。
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