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「……そっちが悪いんでしょう?絡んできたのはソイツらからよ。殺すなら殺せばいいじゃん」
うん、寧ろ死ねるもんなら死ぬんでも構わないし。
「うわ、ムカつくー。殺していい?」
「だから殺すなら殺せばいいって言ったばっか何だけど……アンタ馬鹿?」
別に特に、何の意図はない。
ただ何となく彼と対話してみたかっただけで、私は和えて挑発的な態度を取った。
「はぁ?俺相手に馬鹿とかありえねー、美人だから相手してやろうかと思ったけど、やーめた」
へぇ、相手してくれようとしたんだ……殺気混じりに挑発して失敗した。
大人しくしてれば良かったかなぁ……てか、は?
私が美人……?
あっはっは。
ありえない、ありえない。
マジで大爆笑だよ金髪君。
表情は無表情なまま淡々と心の中では、そんな事を考えてた私は馬鹿丸出しだろうけど、正直そんなの知ったことか。
あーあ、金髪君、呆れてるよ。
「死ねよ」
あ、死ねとか言い出した。
バイバーイ。
片手を振りながら地面を蹴り出して私を切り付けようとナイフを振りかざし笑う金髪君。
あはっ、楽しそう。
ああ――……でも。
殺してくれるんだ。……お礼、言わなきゃね。
「ありがとう」
そう彼に微笑んでお礼を言って私はこの世界に別れを告げ私という生き物の存在を無くす筈だった。
――そう、
その筈だったのに。
――ピタリ。
確かに命が終えると思った刹那。
彼の身体は綺麗に制止した。
ああ、どうして。
また私は生きていく方向で人生を再開させるのか。
「調子、狂うような事すんなよ」
機嫌悪さげに彼が言う。
どうして?
どうして私を殺さなかったの?
さっきまで殺す気満々で楽しげに笑みを称えていたのに。
「…………」
やっぱり私はダメだなぁ……。
溜息を一つ零しながらも黙り込む私。
そんな私に彼は言ったんだ。
「なんで」
どうして、私は今にも殺されようとしていた間際の刹那に。
「微笑ってたんだよ?」
そう、やりきれなそうな表情と苛立ちを含んだ声で彼は言う。
ああ、今思えば。
アレが私と彼の運命が変わりはじめる始まりだったのかもしれない。
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