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「ってな訳で、バイバ~イ」
ニイッと口に弧を描かせた俺は。
一番最初に男を傷つけた愛用のナイフを向け、その心臓へと突き刺してやった。
直後、俺は電話をかける。
どこへ掛けたかって?
ククッ、教えねー。
んなの、俺の勝手だろ?
「あ、護ー?俺、恭ー」
『おや、若でしたか……どうか致しましたか?』.
「いやさー、今、俺の目の前に紀倉組とかいう組の鉄砲玉かなんかの死体が一匹転がってんだよねー……面倒だから早いうち片付けといてくんない?」
『またですか……』
「またとはなんだよ、護のくせに生意気だし」
『僕の癖にとは聞きづてなりませんね……まぁ、いいです。で、若……貴方は、お怪我されてないんですよね』
「あったり前じゃん!」
『でしょうね』
一応というか義理立て並に聞かれた質問に答えてやれば、さも当然だとばかりに溜息が返ってきた。
ちなみに護は俺の世話役みたいなもんで俺が赤ん坊ぐらいの時からの付き合いになる毒舌気味の男だ。
「解ってんなら聞くなよ」
『一応、念のためですから』
「俺に傷つけれる奴なんか滅多にいねーよ」
「解ってますよ、ですから、あくまで確認ですよ」
義務的に答える護。
だけど俺知ってんだよねー、実は護は過保護で俺が心配でしょうがないって事。
まぁ、心配するななんて言ってやらないけどね。
だって俺コイツの困った顔見るの結構好きだから。
『……とりあえず死体は片付けておきます。それより少しは自重して下ださい、最近こういった電話ばかりじゃないですか……無駄に殺り過ぎですよ』
「だって、あっちが勝手に絡んでくんだから、しょーがねーじゃん」
『まぁ、それは確かにそうですが……とにかく程ほどに』
「んー……ま、了解。んじゃな」
『はい、お帰りの際はお気を付けて下さい』
「ん、じゃな」
『はい』
会話が終わるなり携帯の通話を切った俺は携帯を畳んでポケットへと捩込んだ。
望む望まないに関わらず。
恨みを買う買わないに関わらず。
常に命を狙われて殺されかけて、返り討ちにして殺し返す。
んでもって自分で片すの面倒だから世話役の護に処理を任せる電話。
それが俺の日常。
そんな日常が崩れる日がくるなんて俺は、まだ。
「あーあ、暇だし」
気づいてもいなかったんだ。
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