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有仁はマルチ人間。
成績は学年トップだし、スポーツも万能である。
在籍している陸上部では、その俊足で全国大会にも行けるスプリンター。
冬菜が有仁を好きになったのは、それが分かる前で、気が付けば、自分が好きな相手がマルチだった……という、なんとも間抜けな話。
その、向かうところ敵なしの彼氏は、肺の空気を全部吐き出してしまったのではないかという溜め息をついた彼女に、小首を傾げて視線を向けた。
冬菜は、プウッと膨れると、ベッドにもたれて雑誌を読んでいる有仁のところまでハイハイで近付いて、その股の間にこそっと入り込んでもたれかかった。
有仁は、ちょっと顔をしかめて読んでいた雑誌を退かせる。
「溜め息怪獣冬菜ゴン……イテテテテテテテ!!!」
ちょっとふざけた呟きは、冬菜が思い切り有仁の太ももをつねったことで却下された。
有仁は、ジンジン痛む太ももを撫でながら、怪訝そうに尋ねた。
「何かあったん?」
すると、また冬菜はプッと膨れた。
「何もないから困ってんじゃん!」
有仁は首を傾げる。
胸にかかる重みは、有仁は内心、とっても複雑な気分。
嬉しいんだけど、恥ずかしいんだけど、擽ったいんだけど、焦るんだけど……
本気でやばい。
(こいつ、俺が男だって分かってん?)
真面目にそう思う。
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