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「さぁやりかけの仕事がまだありますよ。寒いでしょう」
と茶色のコートをかけてくれました。
「これ!」
それは自分のコートでした。
死んだとき、このコートを着ていました。
だが、幽霊になったら白いワンピースのようなものを着ていました。
「なんで?」
動揺を隠せず、戸惑って言いました。
すると男は、平然と言いました。
「あなたは一人の人間を救った。それにあの独り者もね」
「私違います!かさを返して欲しくて、…それにあなたの手伝いも」
すると、男は陽気に笑った。
「アハハハツ!そうですか!ありがとう…しかしねお嬢さんヒトが犯してしまった禁忌はなによりも」
男の目が光りました。
「ヒトによって、つぐなわねばなりません」
その人は真一文字に口を結んだ。
「ヒトが何かを犯してしまった禁忌、それは自分に犯してしまったことです。なによりも自分を、自分でキズを作ったことなのですよ」
その人は黙ったままでした。
「しかしあなたはヒトを救いました。ちっぽけなことかもしれませんがあなたがあなたを救った代償になります……つまり」
男はニコリと微笑み、
「あなたはヒトとしてまた生きられる。自殺を報いた代償は、ヒトとしてまた生きられる価値を取ったということなのです」
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