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「確かに戦争はいけないわ。けどねジョン、戦争は災害と同じなのよ。それは歴史が物語っているじゃない。」
しばしの沈黙。ジョンは瞳孔を開かせ、焦点が合わない。
この人に惹かれるのは、どんなに世界が目まぐるしく変わっていようが、彼女はその不変的な意志を曲げず、こうして変わってしまった自分を待っていたからだ。
「そうですね、私は1つの解釈に囚われていますね。何かせっかく告白できたのに、諭されるなんて変な話ですね。」
彼女は小さく笑い、突然ジョンの頬に軽くキスをした。耳元でありがとう、と囁いた。
しかしこの春の陽気と、彼女の傍であっても、ジョンは着実に衰弱していた。この暖かさが、風が、それに靡く若葉の木々が、可憐に舞う小鳥が、地べたを這いつくばるゴキブリが、命を吸っていくようだ。
ジョンの疲労はピークに達して、動くことすらままならなかった。
少しでも早く眠りたい。彼女の隣で。
ジョンは木漏れ日のベンチの下、ほのかに香る彼女の隣で、目を閉じた。
ジョンは左脇腹に銃弾を受けていたのだ。女がそれに気づいた時には、すでにジョンの命は“春に吸われた”後だった。
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