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頭に包帯を巻いているだけで、他に怪我をしている様には見えない。
「ねぇ、お母さん。」
「何?」
「何で、お兄ちゃんは怪我をしたの?」
「…覚えてないの?」
私は頷く。
横断歩道を一緒に歩いていたのは覚えてるけど、急に私は転んでいた。
そして、お兄ちゃんは頭から血が…。
「…分かった。話してあげるから、向こうの椅子に座ろう。
お兄ちゃんは大丈夫だから。」
言い、お母さんは私を自販機の置かれた所へと背中を押した。
「はい、夏奈恵の好きなピーチジュース。」
私が座ると、お母さんはジュースを買って手渡してくれた。
冷たくて、ほっぺにつけると気持ち良い。
「あけて。」
「自分で…良いわよ。…はい。」
「ありがとう。」
あけて貰ったジュースを一口。
甘くて美味しい。
私がジュースを飲んだのを見て
「…夏奈恵とお兄ちゃんは交通事故にあったのよ。」
お母さんは辛そうに言った。
「交通事故?」
「そうよ。車がお兄ちゃんと夏奈恵を撥ねたの。」
「…でも私、お兄ちゃんみたいな怪我してないよ。」
「うん…それは、お兄ちゃんが夏奈恵を庇(かば)ってくれたからよ。」
「…。」
「昨日、事故の目撃者から聞いたの。」
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