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私の怪我はたいした事がなく、私は直ぐに学校に行ける様になった。
でも、お兄ちゃんの怪我はかなり酷かったみたいで、ずっと目を覚ましてくれない。
大好きな大好きな、お兄ちゃんは生きているけど…人形みたいで動いてくれない。
お母さんと、お兄ちゃんのお母さんが私に
「お医者様が目を覚ます事は無いって…。」
「植物状態…なんですって…。」
と、教えてくれた。
最初は植物状態が何なのか分からなかったけど…日がたつにつれ、目を覚ます事のない、お兄ちゃんの姿を見て私は理解した。
この姿が植物状態なんだって…。
私は、お兄ちゃんに守ってもらったから大きな怪我も無く、こうして学校にも行ける。
だけど、お兄ちゃんは私を守ったから…私のせいで植物状態になってしまった。
あの日、私が学校に髪留めを忘れてさえいなければ…。
こんな想いと小学校卒業…そして中学進学で忙しかった私は、お兄ちゃんに顔を出す事が出来なくなった。
多分…本当は、お兄ちゃんの植物状態の姿を見るのが嫌だったから…。
お兄ちゃんと会う事なく、私は二十歳の誕生日を迎えた。
本当の事を言うと、お兄ちゃんの事を忘れていた。
だって…辛い記憶だから。
そんなある日、この白い封筒が届いた。
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