・*奏夜*・

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  「お母さん、……あのね」 「ん~どうしたの?」 まだパソコン画面を見ているお母さんに、思い切って言ってみる。 「私…声優になりたいの」 お母さんはゆっくりこっちを向く。そして優しく微笑んだ。 「姫菜ちゃんから何かやりたいって聞いたの久しぶりね」 へっ……? 思ってもみなかった事を言われて少し頭が混乱する。 何て返事を返そうか迷っているとお母さんが話し出した。 「姫菜ちゃんね、今まで余りわがまま言ってこなかったでしょ。勉強もちゃんとするし真っ直ぐ帰ってくるし、とってもいい子。お母さんとお父さんはいつも自慢の娘ねって話すのよ」 そんな風に聞いたのは初めてで、何だか照れくさい…… でも、そんな風に思ってくれてる事は嬉しかった。 「でも、たまにもっとわがまま言ってもいいのにって思ってたの。だから姫菜ちゃんから何かやりたいって言われて嬉しいの」 やば……ちょっと涙出そう。 家族の仲は良かったし、いつも愛情を貰ってるって実感はあった。 でも、こんなにも私の事を考えてくれてるんだって改めて感じさせられた。 「お母さん、ありがとう……」 私がそう言うと、お母さんはニコッて笑う。 「あ、声優になれたら奏夜くんと友達になって紹介してね!」 だって……。お母さんってば抜け目ないんだから…… 少し呆れつつも、すんなりと快諾してくれた事に感謝した。    
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