出会い

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河を流れる段ボールから、顔だけ出した仔犬が見えた。 「うっ嘘!」 円はア然としてしまった。 浅瀬の為、膝ぐらいの深さだとわかっていた円。 買い物袋を草村に置き、靴のまま河に入ろうとした。 「キャンキャン」 鳴き声がさらに近くなる。 「助けなくちゃ!」 意をけして河に入った。 まだ初春。 あまりの水の冷たさに鳥肌が立つ。 「キューン」 仔犬の声。 「待っててね!今助けてあげるからね!」 円は必死に段ボールを目指した。 水の力は想像を超え、円の行く手を阻んだ。 思うように足が進まない。 「間に合わないよ!」 弱きになりながらも流れてくる段ボールに手をのばした。
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