溢れた言葉

出会い

買い物袋を母に渡し靴下履きかえていると、

「なぁに？また出掛けるの？」

円の母が聞いてきた。

円は簡単に事の次第を説明した。

すると、

「♂なら家で飼ってもいいわよ。」

思いがけない言葉がかえってきた。

「えっ？！」

円は驚いた。

円の父親は幼い頃に犬に噛み付かれ、大の犬嫌いなのだ。

「だって、お父さんが…」

円は信じられなかった。

「円には今日の夕飯の時に話すつもりでいたのよね。お父さん、しばらく単身赴任で北海道に行く事になったの。」

「え～！」

円はただ驚いた。

「番犬になるし、ちょうどよかった！」

母はニコニコしていた。

「でも、♀だったら駄目なんだよね？」

円は不安だった。

「とにかくワンチャン、連れていらっしゃい。」

母の言葉に頷くと、又全力疾走で、待ち合わせ場所へ向かった。