隻眼の死神

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 魔物に支配された村、か……成程、面白い。俺の口角は、微かな好奇心を称えるかのごとく自然と上がった。  「お代はここに置いておく」  そう言って、俺は懐から出した一枚の札をテーブルの上に置いた。  「えっ、でもまだ……」  「ご馳走さん、美味しかったよ」  当惑する主人を尻目に、俺はドアを開けて去った。さて、主人が言っていた魔物とやらとお会いせねばな。  相変わらず村人たちとは殆ど会わなかった。会ったとしても二、三人、俺を見るやいなや、沃さと立ち退く。村は不気味な程に静かだった。  そうこうしている内に日は暮れかけ、俺は村を出てすぐ近くの山を登っていた。木々は鬱蒼と茂り、行く手を塞ぐ。辺りに響くのは、木の枝や葉が体に当たる乾いた音だけだった。  俺はただ、周りに浮かぶ人間とそれ以外の何かの臭いを頼りに歩いた。俺の嗅覚が、俺の欲するものが近くにあることを知らせていた。
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