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更に進んでいくと、突然目の前が開けた。山の頂だった。日は既に殆ど沈んでいて、黒い天鵞絨のような空が山を覆いかけていた。
そしてそれは突然、俺の目の前に現れた。
「村のヤツらに、ココに近寄るなって言われなかったかァ?」
その声の主は、犬の頭をした男……いや。
「コボルトか」
コボルトは、大きな口を裂くように開けて笑った。
「兄ちゃん、ココに来るってこたァどういうコトかわかってんだろうなァ?」
コボルトは棍棒を振り回し、唾を飛ばしながら喋り続ける。テリトリー意識の強い奴らの縄張りだったか。仲間を呼ばれると面倒だが、幸いにも、ここに今いるのはこのコボルト一体だけのようだった。
「悪く思うなよォ……すぐに楽にしてやるからよッ!!」
俺の頭があったところを目掛けて、渾身の力を持って棍棒が振り下ろされる。
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