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「あ、恭介。私こっちだから」
いつもの十字路で明日香はそう言って横断歩道を渡ろうとする。明日香を家まで送って行きたいが、まだそれは気恥ずかしい。
「ああ。また明日な」
「うん」
人ごみに紛れながら遠くなっていく姿を目で追う。オレンジ色の傘が鮮やかに目に写っていた。
ふいにその傘がくるりと振り返る。
「・・・?」
明日香が自分のほうに振り返って見つめている。
何だろう?
一瞬俯いてから、いきおいよく視線を上げる。
「・・・・!」
明日香の声がいっそう激しくなった雨の音にかき消される。
「・・・え?」
聞き返そうとしたが明日香はにこりと少し恥ずかしそうに笑うと身を翻して走り去っていった。
まあ明日聞けばいいか。
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