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「ここなら、警視庁にいるよりよほどセキュリティーがしっかりしてる。」
RTSビルの最上階、静かな筝曲のBGMが流れる割烹料理『黎明』の一室で、五十を少し回り白髪混じりの大石が相川に切り出した。
大石が、徳利を大石が相川に傾けると、四十代後半の相川は、少年のような笑みと共にそれを受けた。
歳は違えど相川と幼なじみの大石は、相川の笑みに背筋にゾクリと冷たいものを感じた。
「三年ぶりか……『白い狼』……間違い無い……」
『のか』と言いかけた言葉を飲み込み、
「我々に出来ることが……」
『あれば』と、言いかけた言葉をまた飲み込み首を振り、
「やはりターゲットは貴子さんか。」
と、声を落とした。
三年前までの三年間の事件を知る大石は、この事件が常人の手におえるもので無いこと、また相川自身の想いを良く理解していた。
相川は、その少年のような涼しげな笑みのまま、
「今回はどうもこちらの味方みたいだな。」
と、手にした盃を口に運んだ。
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