第一章 黎明

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 六年前、その財団を震撼させる事件が羽田空港で起きた。  国外から自家用ジェットで帰国した直後の財団の役員と、同行していたSPの数名の内、一人の頭部だけを残して、何者かによってカエルがアスファルトに叩きつけられたごとき姿で惨殺されたのだ。  そのSPの頭部は、たまたま社用で来ていたそのSPの息子の目の前に転がった。  さらにその事件を皮切りに三年もの間、財団の役員ばかりが次々に暗殺されたのだった。  国家の安全を担うべき財団に起きた由々しき事件に、国家の要人は震撼したが、国民には何も知らされることはなかった。  ただ羽田空港の事件のみは、たまたま来ていたTV局によって第一報が流出してしまった。しかし、財団は、これを急激な気圧の変化によるカマイタチのせいにした。『電脳』が気象庁が発表した情報を急ぎ改算し世間を納得させたのだった。  財団関係者で生き残った、たった一人の目撃者、SPの息子の証言は、瀕死の重症を負いながら、 「白ずくめの子供」  と、言葉にするのがやっとだった。  財団は、その子供のコードネームを『白い狼』とし三年前になぜかピタリと止んだ悲劇の後も、執拗にその子供を追っていた。
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