第一章 黎明

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 そんな『白い狼』が味方側と言われても大石は、にわかに信じられなかった。  大石が、無言で相川に盃をすすめるよう徳利を上げると、相川はにまりと笑って盃を上げた。 「殺られたのは、飛龍比翼会のヒットマンの二人と校長が独断で雇った警備員だ。」  図体はデカイが平素律義な前田が、語尾をぞんざいに吐き出した。 「前田、そう怒るな。」  相川がやんわりとたしなめると、前田は子供のようにその巨体を縮込ませた。  大石は、そのなんとも言えない愛嬌のある仕草に顔がほころびかけ、曖昧な表情で咳払いを一つして襟を正した。 「総理大臣の推薦ならいいと思う浅はかさが納得いかんです。せめて我々に一報あって然るべきかと。」 「そう言うな。学園に金は出しても、運営は校長に委ねたのは私だ。責任は私にあるよ。」 「しかし……。」  と、前田は相川に言おうとした言葉を大石をちらりと見て飲み込んで撫然と自分の膝で握った拳を見つめた。  『白い狼』が頻繁に出没していた当時は、学園の警備に各部隊からソルジャーを出し各所に配備していたが、今は前田のレッドフォース(RF)がその任に着いているのみだった。それは、警視庁長官に知らせずともよいことだった。
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