記憶

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「点Oを原点とする座標平面上で、χ軸の正の部分OXを始線とし……」 淡々と進むこの授業が、菅野俊介は一番退屈で、憂鬱だった。 (まだ3時間目か…。あぁ~数学とかわけ分かんねぇ。) 「つまり、0゜≦θ≦180゜の時の三角比と同様に…」 (だめだ…もう限界…) 退屈な授業に負けた俊介は、とうとう寝入ってしまった。 キーンコーンカーンコーン 「……ん~。」 俊介は寝ぼけ眼をこすり時計を見た。 「―……えっ!!?2時!!?5時間目終わってる!!?」 もう一度目をこすり見てみるがやはり、時計の針は2時を指している。 「…3時間目からずっと寝てた…。」 俊介は授業中に寝たことは何度もあったが、今回ほど長い時間寝ていたことは、一度もなかったのだ。 「ごめん…3時間目から5時間目までのノート見せてくれない?」 俊介は隣の席の松永恵里佳に頼んだ。 「何言ってるの?ちゃんとノートとってたじゃない?先生に当てられた難しい問題もすらすら解いてたし」 「…え?」 恵里佳の意外な答えに、俊介は急いで机の上にあるノートを開いてみた。 「書いてある…」 疑問と驚きが俊介の頭の中で一挙に渦巻いた。 「…何で…」 俊介は机の中のノートも見てみた。が同様に、寝ていたはずの教科もきちんとノートがとられているのだ。 (……そんなバカな…) 目の前の奇怪な事実を、俊介は信じることが出来なかった。
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