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「ねえ、わたし学校辞めるの」  と彼女は言った。  僕は蝉の鳴き声がうるさくて、うまく聞き取れない。 「えっ、なに?」  と僕は聞き返す。  彼女はもう一度、繰り返して言う。 「いつ?」  と僕。 「今日」  と彼女。  蝉がとてもうるさい。  本当にうるさいな。  僕は鳴いている蝉たち全員を集めて、一匹ずつ教育をしてやりたかった。とてもファシズム的な教育を。  秋にはみんな死んでしまう蝉たち。  でも僕は待てない。  今すぐにでも、静かになって欲しかった。
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