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泳いでいた2頭が、泳ぎを止め、同じ方向を向いた
(足音が聞こえる)
(ああ…あの足音は)
(ずっと待っていた足音)
(ああ、ずっと待ち続けていた足音)
『ピーチ、ノアール!
ただいまっ!』
(凜!)
(やっぱり凜だ!)
『また今日からよろしくね』
(これからはずっといるんだよな?)
『うん』
(もう、どこにも行かないよな?)
『行かないよ…ずっと
一緒に居る』
(ああ)
(俺…すごく嬉しい)
『俺も嬉しいよ』
もしイルカじゃなかったら、思いきり抱きしめたかった
ううん…イルカでも
抱きしめたい
(バシャン!)
(凜!)
(大丈夫か?)
『ぷはっ!大丈夫』
ピーチの背鰭につかまる
『だって、ピーチとノアールはプールから出れないだろ?だから俺が自分からプールに入ったんだ』
(凜…)
(凜…)
『う~ん…ザラザラ』
(おぃ…)
『なんてね!』
(俺が凜を乗せる)
(俺が乗せる)
(俺だ!)
(違う!)
『うわっ!何?』
(凜は姫ちゃんが乗せるの!)
『姫ちゃん…ありがとう』
(さみしくなんか、なかったんだからっ!)
『うん』
(泣いてなんか、ないんだから)
『うん』
(早く…姫ちゃんと遊びなさい!)
『わかったよ』
(花子!凜を返せ)
(そうだそうだ!)
(い~や!)
『ちょ!落ちる!』
「やっぱり凜はここが
似合ってるな」
「ああ、初めて見る笑顔だな」
プールでイルカと泳ぐ凜を見つめていた
「だけど…寂しいな」
「アサ…俺が居るだろ?」
「そうだけど…なんかさ…弟みたいで子供みたいだったから」
「だな…泣き虫な子供だったな」
「確かに」
「会えない訳じゃないんだ…また来ればいい」
「うん」
「帰ろうか」
「うん」
凜が幸せならそれでいい
「俺、凜の話を書いてみようかな」
「うん、いいね」
「だろ?」
笑いながらそっとプールを離れた
またきっとあえるさ…
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